道路や橋梁といった社会インフラの整備・保全に関わる設計および点検業務を手掛けるジビル調査設計株式会社様。不整地の現場も多く、今回自社点検機材の更なるアップデートのためCuGoV4を導入いただきました。導入背景や、実際に現場でどう利用されているかなど詳しくお話を聞かせていただきました。
お話を伺った方
企画開発室 室長 南出重克様
企画開発室 室長代理/開発・設計・マーケティング担当 横田喜数様
(インタビュー内敬称略)
まずは御社の事業やサービスについて教えてください
南出:建設コンサルタントとして主に公共の構造物、道路や橋梁、トンネルといった建造物の点検調査、設計を行っている会社です。
特に近年公共構造物の老朽化が進んでおり、対策の一環として点検調査の業務が非常に増えてきています。弊社では約10年前から点検調査を行うためのさまざまな技術開発を行っております。
今回弊社製品を導入いただいた、橋梁点検ロボットについて詳細を教えてください
南出:老朽化した橋梁を点検した後、補修という形で工事を行って直す必要性があります。通常はその箇所の写真を撮ってきてそのデータから状況把握を行うのですが、現場が狭い場合どうしても人間が入り込んで撮影することが難しく、正確な状況を把握できないという問題点が出てきます。
そこで今回、不整地利用が可能なCuboRexのCuGo V4を用いて、弊社のマルチカメラシステム「MCS」の、より不整地・狭小空間に対応できるモデルを制作しました。
橋の桁下や狭い水路など、人間が入り込んで作業をすることが難しい現場に遠隔操作で入って行き、複数台のカメラで撮影した画像を元に3Dモデルを作り、現場の損傷状況をさまざまな角度から正確かつ詳細に確認できるデータを作成するロボットです。
マルチカメラシステムCuGoモデル
今回製品導入に至った課題感、きっかけを教えてください
南出:橋の桁下という点検現場は、非常に狭い空間の中に人が入り込んで点検作業を実施するという点でかなり難しい状況でした。
導入前はやはり狭い空間での点検ということで、人間が這いつくばって入っていくのですが、高さが60センチ〜70センチぐらいだと、点検しようにも入っていく事だけで精一杯で作業ができない現場も多い。本当は上を見たいんだけど上を見ることもできずに、ただ匍匐前進するだけになってしまうこともしばしばでした。
そこで自動車の点検で使用するような台車を使って、人間が台車に仰向けで乗る形で現場に入っていって点検をする、というやり方で実施していました。かなり劣悪な作業環境だったこともあり、やり方を再検討しなくてはという課題がありましたが、具体的に何を使ってどうするか、ということは検討できていない状況でした。
CuGoMCSを導入する前の点検調査の様子
そんな中、たまたま情報収集のために参加していた2022年夏の展示会でブースの前を通った事がCuGoを知るきっかけでした。
クローラーユニットのことを知っていたわけではなく本当にたまたま見かけて、これいいね、すぐ使えそうだねと。当時はまだV4が発売前で、その場に展示されていたのはV3でしたがその後にCuboRexのオフィスに伺ってV4をご紹介いただき、すぐに導入を決めました。
導入してからのスピード感が本当に早かった。7月に製品を見て購入して、10月には点検ロボットが完成してましたから。そして同年度中には業務に利用できていたので、開発から現場導入までがスピーディなのは本当に助かりましたね。
雪国・福井県にオフィスを構えるジビル調査設計様。雪上の移動もクローラーなら余裕の走行です
他社の足回りも検討されましたか?
南出:タイヤ型の足回りなどある程度いろいろリサーチはしていたのですが、具体的に導入を考えるところまでは至っていませんでした。やはり実機を見るのがイメージもつくし説得力もあるし一番いいですよね。
なので他社製品と比較検討したということはなかったです。展示会でCuGoを見かけた時にこれだと感じました。
安価なV3ではなくV4を選定した理由はなんだったのでしょうか?
横田:設計的な話から言うとCuGoの上に乗せているMCSの装置自体の大きさをあまり変えたくなかったという点がまずありました。
V3だと少々サイズ感が足りないという点と、水周りで使用することになるので防水性能や反力などスペック的に向上しているV4の方が、より製品化に適しているという点でコストを考えても優れていると感じました。
走行スピードはV3の方が早いのですが、我々の点検はスピードよりも正確性の方が重要となりますので、スピードよりもトルクを中心に考慮したという感じです。
南出:現場での実務として考えると、コンパクトなサイズ感が私どもが点検したいと考えていた現場に非常に適していたという点が大きな理由です。クローラーで駆動しますので、土砂や凸凹がある地面でも乗り越えていけるという点も非常に魅力があったなと。あとは耐久性の高さにも期待感がありました。
CuGoシリーズスペック比較表
CuGo V4の詳細はこちら
V4を導入することで得たメリット、他社製品ではできないと感じた部分はありますか?
横田:やはり汎用性の高さでしょうか。クローラーで駆動するものに対して、MISUMIさんのアルミフレームで本体を組んで設計する。そうなると、どんな装置ともフレームとジョイントしてあげればすぐ取り付けることができるという手軽さが最大のメリットですよね。設計側としては非常に楽です。今はMCSという装置をつけてますけど、組み合わせが容易なので他の製品への展開がとてもやりやすい。他の装置でも一回試してみる、ということも可能になる。これはすごい強みかなと思っています。
導入することで見えてきたデメリットや、今後期待する改善点などはありますか?
横田:そうですね、今後もバリエーションの増加だったり大きいものの開発も進んでいるかと思うのですが、点検調査では水路などの水辺で使用することも多いので耐水性の更なる向上を期待したいところです。結構現場で「水に濡らしたらまずい」と気を使うんですよね。水陸両用のような形で水対策が万全なものがあれば現場サイドは大変助かります。
ただ、今のところ現場では順調に利用できています。1度だけ丸い土管の中を走らせたときにチェーンが外れてしまったという事例はあるんですけど、雪が積もって丘になっているところや泥が溜まった場所など屋外のフィールドでは今のところ順調に利用できていますので、そういう意味では概ね満足しています。
今後期待するところとしては防水性の向上と、土管など丸い斜面の中を点検したりする時に、何かもう少しユニットの形を変えるなどで対応できるともっと点検できる範囲が広がるのかなと思っています。あとはバッテリーの残量がわかるといいなと。今は残量の表示がない状況なので。
今回点検調査作業を自動化したことによるメリットや課題解決につながったと感じる点はどのようなところでしょうか
南出:前述したそもそもの作業効率の向上、安全性の確保という点が大きいと感じています。通常2名体制で行っていた点検作業も自動化することで例えば1人体制でもよくなりました。
また、出来上がってくるデータの質も向上しました。撮影精度が上がったことで二次利用に対する効果も非常に高いものになりました。
点検技術を自動化していくことで、ジビル調査設計様が実現したいインフラ設備、建設コンサル業界の未来はどんなものでしょうか?
南出:建設業界というのは、現場作業は人が行うという事がやはり基本にあるのですが、どんどん人も減って技術者不足になってきますので今後はいわゆるDXを推進していき、様々な新しい技術で補っていきたいですね。私自身、技術的な側面から現場のニーズを的確に捉えて開発に生かしていきたいと感じています。今回のCuGoを使ったMCSも、その中で一つの事例になればと思っています。
橋梁の3Dデータ画像。破損状況を細部まで鮮明に確認、解析が可能
横田:私は元々機械の専門だったのですが、ジビル調査設計には現在入社して4年目になります。土木の業界はDXの分野で少々遅れているところもあり、かつ保守的な業界なので、実際には新しい技術や装置が毛嫌いされてしまうケースもあります。
ですが、効率向上のためにどう良くしていくかという事を考えた時に、やはり新しいことに挑戦し続けなくてはいけないのではないかと思っています。
まずは役に立つ役に立たない以上に、自身の考えるベストなコンセプトを模索する。そこに合うCuGoのようなプロダクトや色々な会社の製品を使って業界全体の利益向上を助長できるような物を開発できればなと。エンジニアとして高い理想を持ちながらやっていきたいなと思っております。
実際、建設業界って3DCADも利用しているところが少なくて。最初にCuboRexさんからV4のデータをいただいた時、3Dデータで来たときはちょっと感激しました。笑 設計もサクサク進みましたし、その辺りの技術者との親和性の高さも導入に至った材料かもしれません。
弊社の製品も、人が入って行き目視で点検することが難しい現場の状況を3Dでお客様に見ていただいて、より早く理解していただく装置なんです。
CuGoは、人が入っていくには困難な現場での負担を軽減し、作業効率や作業の精度を向上していくためのものだという、まさにMCSと同じコンセプトなんです。
私どものMCSも今回CuGoを使うことで更に人が入るのが難しい狭い現場をもっと正確に点検することが可能になった。展示会での本当に偶然のご縁だったのですが、非常にうまくいったケースじゃないかなと思います。
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